雪の千本峠 区切り遍路38日目②からの続きです。
大師像の遍路石から見えるほどの距離に千本峠の峠が見えました。
最後のひと踏ん張りを登って「ふぅ…」と息を抜きます。
峠にはよく目を凝らすと、恐らく遍路道標の上部のみが残っておりました。
古い道を歩くとこうして目を凝らさないと見落としてしまうものも多いです。
俺の遍路では、こうした昔の遺産を見て歩くのも大きな楽しみの一つなので、目を凝らしながら歩いています。
峠からは一気に下り始めるようです。
雪や落ち葉の下りは、荷物が重く滑りやすいので本当に気を使いますね。
それに加えて俺の連れている犬は引っ張り癖があるので、山道では殆んど怒りながら歩きます。
その俺に対して後ろを歩く人が怒るのですが、何より怪我をしないことを第一優先にしているので、ここは遠慮なく怒ります。
犬と遍路なんてしたいとも思わないので、不満があるなら一人で歩かさせて貰って全然構いません。
「あなたは犬と楽しい遍路をどうぞ楽しんでください」っていつも思いながら歩いてます。
それにこの人は「じゃあ犬を交代しよう」と提案しても、この犬を連れることを「引っ張るから」と嫌がります。
非常に矛盾なのですが、後ろを歩くこの人に、この犬を渡すと更に引っ張り「ぜぇぜぇ」と俺に追いついて来ようと首輪で首を絞めながら必死に付いてきます。
この子は先頭を歩かないとダメなんです。(道が分からないくせに)
俺は、遍路は一人でするものだとずっと思っていますので、未だに遍路友達の三間から宇和までを乱入して邪魔したことを半分以上後悔しています。
自分のペースがありますし、それを何よりも感じるのは、人と歩いた時の写真の少なさですね。
人に付いていくことや会話に気を取られて風景を見る余裕もないし、せっかくの遍路なのに今までの自分を内観する余裕も無くなる。
1巡目は色んな人が付いて来た遍路でしたが、人と歩いた日の記憶や写真は本当に少ないです。
峠にはもう一つ、あまり見かけない道標がありました。
今回の旅の数ヶ所で見かけたこの小さな道標。
個人的には好きなデザインですが、嘘つきのあの子にも来てる気がします。
峠を振り返り撮った一枚。
お山さんの先から大きく左にカーブして峠となりますが、この短距離で既に付いてこない人がいるので、「何かあったのかな?」と少し戻り確認と言ったことを1度の旅に何度するでしょう。
遅いし、犬の「クンクン」に毎回付き合っている。
何しに来てるんだか…。
峠からは一度下り、道しるべにもある高野と言う場所までもう一度登ることになります。
下っている途中に、明らかに人が通っていなそうな方へ遍路道標が誘導しています。
今まで歩いて来た道筋は左にカーブしておりますが、これは林業の作業道なのでしょうか?
遍路道標の示す方向は細く、草も生えているので、この場所は時期によっては間違ってしまいそうですね。
手元にある外国人向けの遍路地図には拡大され「迷いやすい」と書かれているポイントです。
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その先をぐるッと回ったら少し登り始め高野へ。
千本峠を抜けたようで日の当たる場所に出ました。
突き当りに道標。
遍路道は左を示していますが、右に100mほど進めば展望台と休憩所があるので、ここで休憩を入れましょう。
展望台とは私有地で入るのに100円必要な場所でした。
そのすぐ手前に東屋とトイレがありますので、ここでソーラー充電をしながら休憩を入れます。
ここで昨晩は山中でのテント泊で食器が洗えなかったので、水道で洗えないか期待したのですが、水道は止められておりました。
凍結の恐れからか分かりませんが、写真の左に写る神社の手水場の水もカチカチに凍っていました。
念のため、我が家はこうして旅の最中は公園の水道などで食器を洗わせて頂くので、食器洗いの洗剤は使いませんし、調理にも油を使いません。
時刻は10時頃だったと思います。
今日はまだまだ先が長いので、休憩も短く出発します。
そこから少し見えた景色に、車を停めている久万高原町の町が見えました。
今回の旅はこの久万高原町から松山、今治を越えて西条市の小松まで進むことになります。
高野休憩所を出てすぐにお地蔵さん。
いつの時代からか、久万高原町の町に荷物を置いて44番、45番を打ち戻る形を取るようになった遍路ですが、この千本峠ルートが本来のルートであったと聞いております。
有志の方々のお陰で各地の遍路道の復元が続き、そこを歩かさせて頂き、こうして歴史を感じる石仏や道標を見させて頂き、本当に有難いです。
四国から遠い地に住んでいるため、出来ることは少しの寄付をすることと、その道を歩き、記録に残すことくらいです。
高野展望台からは少しずつ下り始めました。
再び車道から逸れて、遍路道へ入ります。
雪の道もですが、本当に歩いたことのない道はワクワクします。
ここまで千本峠を歩いた感想は、大満足にいい遍路道でした。
何度「これはいい遍路道だ!」と声に出ていたかは同行者の日記で楽しみにしていてください。
今後歩くことがあるならば、久万高原町ではこの道を選び続けることになるでしょう。
峠御堂(トンネル)を含め退屈な打戻りをせずに済み、何よりアスファルトではない本来の遍路道ですし、距離もそんなに変わらないでしょう。