遍路

篠山で出会った先達兄ちゃん 区切り遍路33日目 ⑤

二の鳥居から篠山の修験道を歩く。

何度目の休憩だろう?

いや、歩いては立ち止まり、歩いては立ち止まりの繰り返しで、そんなには纏まった休憩を取っていない。

登り始めて一時間位だろうか?

座り込んで休憩していると、熊避けの鈴の音と共に若い男性が1人下ってきた。

腰には小さな熊手を携帯していたので、市の関係者が登山道の整備をしているのかと思った。

挨拶をして、1つ質問をした。

俺『この先、山水はありますか?』

情報は既に仕入れていても、どうしても事実を確認しておきたかった。

一応、野宿遍路だ。

本当に沢山の情報を調べてるつもりだ。

しかし、現実が違っていたら、次の手を打たなくてはならない。

遍路中は常に幾つかの選択肢を考えながら歩いている。

 

男性の答えは山頂付近の山水では無く、車道の山水(2つ目)についてのものだった。

男性『車道に出て500メートルほど下ったらありましたよ』

俺(車道を下るのか…、遍路道とは無縁だけど500メートルならアリだな。どうしてもの時はそこまで水を汲みに行こう)

 

俺は彼の口から山頂付近の話が出なかったことに疑問を感じながらお礼を言って別れた。

それから1,2時間登り、再び座り込んで休憩してた時、

ふと、急勾配の進行方向の先から(上から)男性が1人しゃがみこんでこっちを見ていたのが目に入った。

俺『あれっ?』

よく見るとさっきの男性だった。

わざわざ、

男性『さっき500メートルと答えてしまったけど、実際には1.6キロあったので心配になって上から下ってきました』

との事だった。

本当に申し訳ない話で、わざわざこんな山道を、それを知らせるためだけに…。

しかし、その恐ろしさを知るのはこの後の話だった。

『ここでは滅多にお遍路さんを見かけないから』と、男性は俺達を心配して先導して歩いてくれた。

暫くなだらかな道を歩いていると、

男性『ここから激坂が始まります』

本当にその通りの急勾配の登り坂が始まり、しかもその区間はかなり長く感じた。

俺だけ全然ついていけない。

俺『こんな坂をワザワザ知らせるためにすみません』

しかも、男性の手にはマウンテンバイクが。

そう、この男性はこの道をよくマウンテンバイクで下ることを趣味にしており、

その整備で熊手を片手に山を歩いて下ってきていたのだ。

どうりで綺麗な道な訳だ。

そして、男性が山頂付近の山水を知らなかったのも、男性は標高800メートルの第一駐車場から自転車で下ることを趣味にしており、

そこから上は登ったことが無かった訳だ。

『ひぃひぃ』登っていると、木々の隙間からいよいよ篠山の本体が見えた。

そして第一駐車場に延びているであろう車道のガードレールも見えてきた。

篠山は山頂に行くにつれてどんどん勾配はキツくなってるし、

こうして本体を目視しても、やはり勾配はこれから更に増している。

3人と2匹で必死に歩き、やっと前方に希望が見えた。

俺『あれは………、篠山荘……か?』

道の先に建物の壁と窓が確認できる。

そして辿り着いた篠山荘。

避難小屋と思ってたので、もしかすると緊急時はお世話になることもあるかも、と思ってたけど鍵は閉まっておりました。

そもそも犬連れて中には入りたくないし、落書きも目立ったので、あまり使用されていないのでしょう。

篠山荘から下に目をやると『ホッ』としました。

あれは間違いなく第一駐車場……。

ここまで来たということは、あと、ひと、踏ん張り………。

奥に篠山の最後が見えた。

時刻は16時になっていました。

男性は自転車を分解して車に積み込み作業中です。

俺はトイレを済ませ、進むか、この駐車場で野宿をするのか考えてました。

時刻は16時。

ここからは3,40分で登れると男性も調べてくれたけど、

既に体力も気力もほぼ使い、そんな短時間で登れる自信もありません。

そもそも登山客と我々の荷物は何倍(何十倍)も重さが違う。

それに、17時過ぎには暗くなる今の時期、果たして山の中はどうなるかわかりません。

『登ろうか………』

2人ともの答えでした。

この先、テントを張る場所がある保証もない。

駐車場の平坦な環境、その角には屋根のある場所もあり、未練も残ったけど、まだやってみましょう。

駐車場は愛媛と高知の県境でした。

何より安全に寝れる場所が大切だけど、

駐車場にある篠山の文字が今いる場所を実感させます。

1日通して登りたい。

看板をみてもまだ遠そうだし、ここから篠山って感じ。

明日下る秡川温泉も載ってます。

果たして無事下山できるのか。

お兄さんと手を振り別れて、登り始めてすぐに山頂まで1000メートルの立て札。

山の登りの1キロは本当に遠い。

同じく登り始めてすぐの篠山神社の看板。

ネットで見ていた写真が現実の物となる。

この看板にも『登り30分から40分』と。

その裏にはとても立派な休憩所。

余りにいい環境だから再び『ここで野宿しようか?』との会話。

いや、進もう。

激しい登りに、歩いて、止まって、

『ひぃひぃ』言いながら。

落ち葉と岩と、ゴロゴロ石と激しい登りの篠山道。

遠くに水の音が聞こえ、そこに近づき、

1番大切なポイントである水場と遍路墓を見て俺は愕然とすることとなります。

奥に見える貯水タンク…、

何か、違和感あるよな………………、と。

 

 

あの時のお兄さんへ。

旅を終えて、お世話になった人達を思い出しながら、

あの時、ワザワザ山を下ってきてくれたお兄さんの連絡先を聞いておけばと非常に後悔しております。

疲れ果ててたあの時は何も出来ず、何も思い浮かばずでした。

もし、これを見て心当たりがあったら連絡を頂けると嬉しいです。

見ての通り、非常に怪しい人間ではありますが、恩のある人を裏切るほど落ちてはおりません。

感謝しております。

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