遍路石を解読する 区切り遍路42日目①からの続きです。
番外札所である臼井御来迎での休憩を予定していた我々でしたが、止まらぬ近所の犬の吠えに耐えきらず出発することにしました。
鳴き止んでくれるかな?と暫く待っても思い出したように一定間隔で吠え続けます。
我が家の犬に反応したのでしょう、それにしても一定間隔の吠えに見事にイライラしてしまいました。
遍路には十善戒を初めとして色んな戒めのようなものがあり、憎むことに”納経所トラブル”で主に耳にする「修行をやり直したら?」との嫌味などに用いられることも多々あります。
そもそも俺の信じる輪廻転生では課題あっての生まれ変わりであり、完ぺきな人間など存在していないと思っている(やっとこれが理解できた)ので、複雑な思いでこのようなことを見ております。
遍路だからと言って全ての人が完ぺきを目指して”修行”を目的に歩いているわけではない。
しかし少し怒りを表せば、それを”揚げ足”として”すかさず”攻撃の材料としてしまう。
そもそも1200kmの道のりを平均42日かけて山あり谷あり、雨、風、暑さ、寒さの道中に起きる当然の感情のひとつ”怒り”それも含めて遍路なのに…。
上の例で言えば、遍路ブームでとても見かけていた団体バス添乗員が抱える山のような納経と、それを待たされる遍路の一幕でありますが、勿論俺も経験したことが何度もあります。
遍路を商売としている添乗員、しかも、仕事とはいえ自身も遍路の最中ともいえる中に吐く「修行を1からやり直したら?」は、本当に悲しくもあり、愚かでもあり、くだらなくもある、我が身に跳ね返る言葉。
仮に俺がそんなことを言われたとしたら、その山のように抱えている納経帳全てが100周巡ったように赤色に染まるぜ?
逮捕、アルコール依存症、離婚と言う後悔の人生の生き直しを目標に歩く俺も、遍路に力を借りてある程度の成長は目指しておりますが、もう今世ではここら辺が限界。
「完ぺきにはとてもなれない…」と言うのが、精神病院に入院するほど必死に足掻き苦しんだ先に見えた今現在の答えです。
俺は遍路を続けさせてもらっておりますが、十善戒を初めとして、遠く及ばず、その境地の半分すら到達できない、それは来世に託し、今世は今のこと(断つこと)に集中することとします。
臼井御来迎からは遍路屈指の細く車の往来のある歩きにくい住宅地を進み、番外札所や寺院などが密集しているエリアを歩きます。
その1つ、今回は是非とも立ち寄ってみたかった日切大師へ行ってみましょう。
余談ですが、このエリアにある”そごうマート”が俺の最もお気に入りのスーパーで、こんなにポッと入りやすいスーパーは他に思いつきませんね。
便利とは言えコンビニは極力避けたくもあるので、スーパーに売っている新鮮な食材を遍路中に手に入れられるのは本当に嬉しいことであります。
日切大師へは今まで歩いて来た道からほんの少しだけ外れます。
時間にして2,3分と言ったところでしょうか、細い道を歩くと袖付手指しの道標と山門が見えます。
道標には「四国八十八ヶ所御本尊大師〇〇〇所」と彫られているように見えます。
広くない境内には大きな楠の木と、独特な形状の文字の石柱が沢山とお堂がありました。
本堂の中を照らす灯りはレトロ。
時代はLED!電気代節約になりますよ!
記憶が正しければ境内の写真をいくつも撮ったと思いますが2枚しか残ってなかった恐怖!
こじんまりとしたお寺でしたがお山さんとお互いに「何か良かったねぇ~」と話して後にします。
日切大師のすぐ向かいには、遍路では有名な光明寺と言うお寺があります。
前回歩いた時はここで一夜を明かさせていただき、白い車の奥に見える”遍路宿”に船で世界を旅しているオーストラリア人2名が、そして我々は境内にテントを張らせていただきました。
住職様はとても素晴らしいしっかりとされた方の印象があります。
まずは本堂にご挨拶に行くこと、”通夜堂”ではなく”遍路宿”としている根拠など、改めて大切なことを学ばせていただき、本堂では仏像も拝見させていただきました。
残念ながら今回は本堂内で何かされている最中だったので、外で読経を済ませ先を急ぐことにしました。
光明寺を出てすぐに大明神川を渡り、立派な遍路石を見かけます。
右側の遍路石には、
前札ヨリ 四国六十番前札所清楽寺へ五十余丁
同六十一番札所香園寺へ四丁
六十二番札所一ノ宮へ八丁
新町 西山 久妙寺 生木地蔵 大峰寺
左の遍路石はこんぴら大門への道標で、この付近には金毘羅を示す道標が数ヶ所見受けられました。
右の遍路石を自分なりに解読すると、
・60番札所の前札所”清楽寺”
・そこから61番札所香園寺までが四丁
・そこから62番札所一ノ宮まで八丁(一ノ宮とは神仏分離で廃寺になった寺で、その後再興されたのが宝寿寺。しかし予讃線開通の為現在の場所とは違う。更に後述)
・新町 ここから2kmほど先にある地区
・西山 別格10番札所西山興隆寺
・久妙寺 番外札所(別格10番~11番の中間)
・生木地蔵 別格11番札所生木地蔵(正善寺)
・大峰寺 前回”大嶺寺”とも彫られていた60番札所横峰寺のこと。
昔はここから左の道へ進み一ノ宮、香園寺、横峰寺へと進んでいましたが、一ノ宮が現在の位置付近に移された(予讃線とは別件)ことにより、現在の道順である横峰寺、香園寺、一ノ宮へと回るようになりました。
まぁ、今となっては宿泊の関係で61番、60番or62番と打つようになっているわけでありますが、
1600年代に書かれた真念著「四国徧禮道指南」時点で「一ノ宮が新屋敷村に移された」とありますので、上にも書いた”予讃線と別件”も含め62番札所の移り変わりも数回あったのでしょう。
新品価格 |
先ほどの遍路石から右の道へ進むとショックな光景を目にしました。
何処かで聞いた覚えはあったのだけど、入ったことのある銭湯が閉店されておりました…。
只でさえ貴重な遍路道沿いのお風呂なのに…。
そこからも住宅地をカクカクと曲がりながら県道を進みます。
道標に助けられる道ですね。
「いきき地蔵」と記された遍路石。
この辺りから生木地蔵を示す遍路石をとても多く見かけることとなります。
ここの本尊にとても興味を惹かれた時期もありました。
以前の遍路にとって88以外でも大切にされていた霊場は沢山ありますが、こうしてその名残が確認できると嬉しいです。
似たような狭い道を道をてくてく。
遍路石を見つけたら「おっ!」と寄っていく。
それだけの道。
そして大きな分岐点に差し掛かり、初めて歩くことになる88ルートへ進みます。
今までは2回ともこの先の二股を右へ別格10番西山興隆寺ルートへ進みましたので今回は左の道へ、ワクワクですね。