槙の谷集落を歩く 区切り遍路29日目⑤からの続きです。
素鷲神社を通り過ぎて少し進むと、見るからに遍路道の入口が見えた。
丸太を何本も寝かせ入口が封鎖されているように見える。
はて…、これは入るなってことなのか、それとも車は入って来るなと言っているのかどっちともとれる。
とは言え、注意書きとか無いし、遍路道標も示しているのでこのまま進むことにした。
結論から言うとこの遍路道は大きくS字に迂回している車道を真っ直ぐ突き進む道だった。
比較的歩きやすい道ではあったが、途中で1ヶ所だけ小川に地面をえぐられたコンクリート道の上を恐る恐る歩く場所があった。
その道を100mほど進むと車道に出る。
再び車道を真っ直ぐ突き抜けて遍路道へ進もうと思うが、先ほどとは違う雰囲気が進行方向に漂っている。
先ほどよりも草が伸びており、奥の方はそれより酷く見えたが、出来る限り遍路道を歩いて見たいので進むことにした。
しかし、先のカーブを曲がった辺りから腰ほどに延びた草によってかなり歩行が困難になった。
“引き返す”と言う選択肢は性格上考えないタイプなのだが、それが口に出たほど歩きにくい。
結果を知った今なら車道を進むことにするが、勿論この時はそれすら分からず必死に歩いた。
既に登りに入っている遍路道だ。
腰ほどに延びた草でも登り坂だと目の前の草は俺の背丈ほどになる。
俺「キツイね、引き返そうか…」
そう言ってふと足元に視線をやると、
奇遇にも草に埋もれた舟形地蔵が目に入る。
途端に嬉しくなり、ますますこの遍路道を歩いてみたくなり進むことを決断。
ザックからナイフを取り出し邪魔な草や蔓を切るが、果物の皮むきに使っているオピネルでは全く役に立たないし、そもそも草の量がひどくて意味がない。
写真から伝わるだろうか、前も見えないこの道の草をかき分け必死に歩いた。
犬達も殆んど歩けていない。
4足歩行で身長の低い彼らはもっと悲惨なジャングルの中を歩いている感覚だろう。
振り返るとカイもクウも身体に草やツタが絡まり前に進めていない。
先頭を歩く俺の顔には沢山のクモの巣が張り付き、突然目の前に現れるジョロウグモに「うぁ!!」っと驚く。
その俺に足元を歩くクウは驚き後ろに跳ねる。
身動きの取りにくい2人と2匹はリードで繋ぎ合っている為、ますます身動きが取れない。
俺が見通しが悪い坂道の不安定な足場を、重い荷物と疲労により力が入らない足で必死に草木をかき分け進めば、後ろからクウが進みたくないと俺を下に引っ張り俺はひっくり返りそうになる。
ビーグル雑種だから山道は好きだろうと予想していたのに、この狩猟犬モドキは蓋を空けたら山道が苦手なビーグルモドキだった。
そんな酷かった道を必死に歩ききり、本格的な遍路道っぽい入り口に着いた。
草をかき分け潜りながら歩いた影響で俺の首の周りには色んなものが付き、気持ち悪い思いをした。
必死に歩いたこの道も100m程度しか進んでいないようだ。
登り口にあった看板に目をやると、ここから岩屋寺までの簡単な道標が書いてあった。
四国の山を歩いていると「こんな所に人が住んでいたのか」と驚くことがあるが、ここから先にもそんな家が数件あったようだ。
ここをスタートして一般的なルートとの合流地点となる八丁坂までの距離は約1,200メートル。
標高550メートルの素鷲神社から水峠(みずのとう推定標高770メートル)まで登った後、少し下り標高730メートルの八丁坂へ向かう。
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今でも必ず持ち歩いているオピネル#8は丁度いい大きさのナイフで、果物の皮を剥いたり袋を開けたりと、ナイフ入門にはお勧めの一本となります。