三坂峠を目指して 区切り遍路38日目⑤からの続きです。
久万高原町から続くアスファルト道を逸れ、やっと三坂峠の入口に辿り着きました。
三坂峠は伊予と土佐を結ぶ土佐街道にある急峻な峠で、明治27年に国道33号線が出来るまでの主要道路でした。
考えてみれば当たり前のことではあるのですが、こうして四国各地の遍路道を歩いていると、自動車が普及していない時代に人の足で歩かれていた険しい峠道に、車が普通である時代に生まれた我々は驚いてしまいます。
2月末の久万高原町では雪どころか、分厚い氷もあちこちで見ることが出来ました。
これも本当に分厚い氷で、南九州の雪の降らない地に住む我々からすると、大騒ぎするほど珍しい光景となります。
ここもまた、岩肌に分厚い氷がびっしりと張り付いている。
珍しくて珍しくて「ここも氷が張っているよ!」と山中で叫ぶ!
そこから反対側を見ると、砥部と松山を見渡せる有名なポイントですね。
真念著書にもここから見える伊予の街や松山城について書かれていますので、古から変わらない景色なのでしょうね。
残念ながら今日は霞んでおり、展望は良くありませんでしたが、三坂峠と言えばここと言った名所に来れて良かったです。
「ここ!ここ!」と記憶に残る場所に再来するのって心の癒しになりますよね。
今日はこの視界のずっと先まで、この谷間に沿って三坂峠を下っていきます。
名前の由来そのままの坂。
さっきからずっと坂のままですが、この坂は何処から何処までの坂なのでしょうか?
そりゃ、鍋落とせば割れますよ。
四国を歩いていると、看板や道標に対してマジックなどで書かれた反論の戦いをよく目にします。
よく目にするのは我が家も嫌っている嘘つき道標の距離数に対する反論や、矢印に対して「×」、「遍路道はこっち!」などですが、ここは看板に軍配が上がりますね。
この看板に「?」と書き込んだ方が言いたいのは「45番岩屋寺、46番浄瑠璃寺を打ち終えた遍路たち」の46番浄瑠璃寺に対する異議でしょうが、三坂峠を結ぶのは45番岩屋寺と46番浄瑠璃寺であり、つまりこの看板は逆打ちのことも伝えたいのでしょう。
ここは44番大宝寺ではなく、46番浄瑠璃寺で正解です。
それにしても遅いですねぇ…。
少し歩いて振り返れば随分と後ろを歩かれてるこの方。
本当にね、今でも頻繁に思い出す(ちなみに昨晩も)67番札所付近で俺に「女性と歩調を合わせないなんて酷い男だ」と言った親父を、あの時やっつけとけば良かったと本当に後悔してますよ。
もしこれ見てたらコメント下さいね。
遍路は遠足やデートじゃねえんだよ。
それに俺は1人で自分と向き合い、計画や取捨選択を繰り返しながら歩くのが遍路だと思っているので、人と歩く遍路とかちょっと考えたくないですね。
1人で歩きながら感動など良いことばかりだけではなく、時には怒り、泣き、失敗して投げやりになったり、まさに人生即遍路のように、1200km歩く中に色んなドラマを経験することを大切にしたいと思っています。
楽しいことばかりじゃないけど、その全てを「楽しんでみよう」と大袈裟に受け入れる姿に遍路から学べることがあると思います。
風呂に入れなかったり、人の3倍も4倍も重い荷物を背負って歩いたり、野宿もまたその一環なのでしょうか?
いや、犬はいいわ…。
三坂峠は長い下りの遍路道ですが、アスファルト道よりはずっと良く、歩いていて気持ちいいです。
こんな綺麗なふかふかの遍路道、長く歩いているとこういう道を欲するようになります。
アスファルトが歩くための物ではないことを痛感しますからね。
我ながら、この道標を書いた人を直感で同類と感じてしまい、会ってみたいと思いました。
きっと俺達仲良くなれるって。
でも向こうからすると、こんな変人と同類って言われたくないと思うんだろうな。
その考えに賛成するけど、仲良くなれるって。うん。絶対。
随分と下って、思い出の東屋が見えてきました。
以前はここで休憩しようとカップ麺のお湯を沸かそうとしたら、そこに来たおばちゃん遍路に気を使ってしまい、すぐに移動することになった。
勿論、その思い出にお互い「あの東屋だ」と話し、今回はここでゆっくり休憩することとしました。
時刻は14時頃ですが、まだまだ46番浄瑠璃寺は遠いです。
東屋を出るとすぐにコンクリートの道となり、ここからの急な下り坂がまた一段と堪えます。
夫婦2人とも膝に傷を持っているので、下りになるととても痛い思いをします。
長いんですよ…、三坂峠の下りって本当に…。
逆打ちだと間違いなく難所ですね。
有名な坂本屋が見えてきました。
お山さん「坂本屋閉まってるね」
俺「取材が来る時しか開かねぇんだよ」
すんません。
特に恨みとか無いのですが、本音が出ました。
確か週1回だか開いていたと思うのですが、俺は開いているところを見たことないです。
お遍路仲間はここが開いていた時に歩かれていますが、俺からすると、これだけ遍路を経験して見かけたこともない寺の坊主がテレビの取材の時だけ境内を歩いているようなのと同じ扱いで、特に恨みとかはないのですが本当にそんな認識なんです。
現在はコロナにより休止されていましたね。
坂本屋の前でトレッキングブーツからスリッパに履き替えて、まだ遠い46番札所を目指しますよ。
俺はまだまだ48番付近の温泉を微塵も諦めてませんからね!