「秡川温泉と岩陰大師」の続きです。
目次
御槇へ
「少林寺ってどこだろ?」と言いながら、槇川の峠を越えて御槇小学校まで来ました。
俺は歩くたびに必ず目を引く場所があります。
それは学校のプールや川など水のある場所。
本当に遍路中の俺の頭の中って「お風呂入りたい」が90%を占めているので、
「あー、飛び込みたい…」
カイ君に暴露された冬の峠での滝行も、寒さだって、その分の水を背負って山道を登ることだって、
1日の汗を流せるのならば何てことない!!!
毎日風呂に入れるならば、挑んでやりましょ遍路道。
「おら、篠山の山水さ温めて山頂でシャワーさ浴びるだ!」
あれは流石に寒いし、それより体力尽きて止めました。
御槇小学校を過ぎてすぐにみまきガーデンと言う、ずっと気になっていたポイントがありました。
外国人向けの遍路地図には、みまきガーデンまで「No food no water」と書いてあります。
これを訳すと、篠山道ではここまで水も食料も無いということです。
念のため付け加えると、愛南町の札掛を出発してここに来るまでに確認できたのは、
自動販売機は3ヶ所、
山水は篠山山頂付近と秡川温泉駐車場の2ヶ所。
食料は秡川温泉前にあるうどん屋の1件のみでした。
決してNo foodでも、No waterでもありませんでしたが、それに近い状態にはありました。
俺はみまきガーデンを飲食店だと思っていたのですが、土日のみバイキング営業で、宿泊施設がメインだったのですね。
この場所に宿泊施設があるのはとても重要ですね!
さぁ、皆さん、篠山道へGOですよ。
因みに日本人向け?のイエローブックこと遍路地図には札掛から篠山神社の打戻りコースしか載っておりません。
雨がやまないまま黙々と県道を歩きます。
道路脇に石灯籠。
何もかもが遍路の遺産に見えてきます。
この辺りに民宿の看板を見つけ「宿があるやん!」と嬉しくなりましたが、きっとあれは看板のみ営業している民宿だったのでしょう。
まぁ、いいです。
皆でみまきガーデンにGOだ!
そのまま歩き続けると御槇の集落に向かう旧道があったので入りましょう。
その入り口に、この地域で最も重要視していた福田百貨店の看板です。
その裏の茂みにお遍路レーダーが反応したので入っていくと、何かあるぞ!
俺にはよく分らんが、金剛って書いてあるから、何かが金剛なんだな。
いいんだ。
石碑や石仏が好きなんだ。俺は。うん。
そのすぐ先の自然休養管理センターと言う施設に自動販売機あり。
喜んでた俺の目を疑ったのは、何と!お馴染み「お遍路さんトイレをどーぞ」のあの青と赤いお遍路さんマークがここにありました!
この道にもまだお遍路さんの可能性が残っていた!
時刻は16時過ぎ。
きっと目指していたJAスーパーも近い!
食料もガスも手に入る!
俺は文明を感じるぞ!
久し振りの店で物資補給
ありました。
事前情報では掴めてなかった貴重なスーパーです。
予想通りの規模です。
張り切って物資補給しますよ!
分かってます!
割高なのは分かってます!
品薄なんです。
でも、こんなところだから張り切ってお金を使わせていただきますよ!
助かりました!ありがとう!
君がいてくれて本当に良かった!
外で待つお山さんに元気の出る甘いものとか野菜ジュースを買っていく。
店の前でむしゃむしゃしていると地元のおっちゃんがこっち見て話している。
おっちゃんA「なんで、こんな所にお遍路さんがいるんだ?」
おっちゃんB「延光寺から来たんやろ」
俺(ちげーし。延光寺だと観自在寺飛ばしてるじゃねーか)
おっちゃんB「延光寺がどーの」
おっちゃんB「延光寺がどーの」
おっちゃんB「延光寺がどーの」
俺(お前、絶対知らんやろ)
おっちゃんA「へー」
俺(お前、絶対聞いてないやろ)
福田百貨店
JAスーパーのすぐ先に、
ありました!
福田百貨店!
ずっと調べてた場所だけど、JAと近すぎて何か嬉しくなかった!
この福田百貨店には本当に興味を持っていました。
外国人向けの遍路地図には店の情報がここしか載ってなくて「一体どんな品揃えなんだろう?」と衛星写真から建物も確認して予想したりしていた。
しかし、どうも雰囲気がおかしい。
電気は点いているけど部分的にシャッターが下りています。
お山さん「私、先に源池公園に行っとくね」
俺「わかった」(お前が食うものだろが…)
そう言って恐る恐る戸をスライドすると開いたので薄暗い店内に入った。
この時の俺の気持ちは、古民家だし薄暗いオシャレな店なのだろうと。
すると奥で「えっ?」って感じでこっちを見る店主と目があった。
どうやら今日は店休日だったようだが、店主のイケメンさんは快く品物を出して売ってくれた。
イケメン店主「今日は下って町(津島)まで下りるんですか?」
東南アジア顔の遍路「いえ、そこの源池公園で野宿しようと思って食料を…すみません…(津島まで下りなんだ)」
イケメン店主「ああ、なるほど!あそこはキャンプ場的扱いの公園ですよね」
東南アジア顔の遍路「えっ!そうなんですか!安心した~」
イケメン店主「これ、良かったらどうぞ」
砂糖菓子のお接待をいただき、俺は店休日に突撃してしまった気まずさを隠すようにお菓子を2個買って店を出た。
福田百貨店は食料と言うより、健康的な素材のお菓子などを置いている店と言う印象を受けた。
そして目の前に郵便局があったので、余り過ぎて困っているお金を通帳に入れた。
JAと福田百貨店でたんまりと買い込んで食糧難もクリア出来た。
体力回復の甘いものやお菓子、そして焼きそばなどの食料。
既にパンとかは店の前で食べたんだ。
予想していた通りカセットガスは3本セットしかなくバラ売りは無かった。
遍路ならきっと誰もが喜ぶずっしり感。
いいんだ、俺は、いつか40㎏背負って遍路することを目指してるんだ。
福田百貨店を出てお山さんに連絡を取ろうとスマホを取り出すと見慣れないラインが届いていた。
「なんだ?」とよく見ると、何度となくお接待に現れてくれる幸運の女神こと、そらとうみともりさんからのラインだった。
そらうみさん「温泉いきましょ~♪」
俺(やった~~~~!)
俺は早速返事をし、現在地を伝えた。
さすがベテラン遍路のそらうみさんだから大体の目星は付けていて近くまで来ていた。
そらうみさん「何か食べたいものはあります?」
歩きながら連絡を取っていたので、俺は野宿地の源池公園に辿り着きお山さんに今の状況を伝えた。
するとお山さんは恐ろしい真顔でこう言った。
お山さん「そらうみさんって本当にピンチの時に現れるよね…」
そう、俺は買い物をしていてラインに気づくのが遅れてしまったが、まさに食糧難の時にそらうみさんから連絡が来ていたのだ。
源池公園は福田百貨店から近く、とても広い公園だった。
雨の中急いでテントを設営したりカッパを外に干したりした。
大量のお接待
そして、大量の食料と共に、凄く久し振りにそらうみさんと再会を果たす。
温泉に連れて行ってくださると言うのに、どうしても気になるのは犬の存在。
以前、足摺岬の温泉に連れて行って頂いた時は俺達だけ温泉に入り、そらうみさんは犬と車で待たせることとなってしまったのだ。
車でも3時間は離れているところまでワザワザ来ていただいたのに。
それは本当に申し訳ないから、俺達は昼に温泉に入ったことを伝えて、そらうみさんだけ秡川温泉に行くこととなった。
そらうみさん「車だとすぐそこだから後で一緒にいきましょ♪」
俺達は久し振りのご馳走にニコニコしながら夕食を食べた。
やはりカロリーが不足していたのか、あっという間に完食した。
圧倒的野菜派のお山さんですら「肉がたくさん食べたい!」と答えるほどだった。
そこにそらうみさんが帰ってきてゴミを持って帰ってくれるとのこと。
本当に何から何まで有難いし、遍路のことを理解されています。
ゴミの処分って旅先だと本当に大変なんです。
「ありがとうございます」と言いたいところだけど、実はさっきそらうみさんが温泉に行った辺りから急激に俺の体調が悪くなった。
テント設営で雨に濡れてしまい、とても身体が冷えてしまったのだ。
カッパのズボンをサボったことにより足も冷えているし、さっきから本当に凄い豪雨になった。
ハッキリと分かるほど体調がおかしくなっていく。
これは確実に熱を出してしまう。
念のため言うと、頭と精神は常におかしい。
俺「すみません、さっきは断ったけど、寒いので温泉に連れて行ってください…」
そらうみさん「行きましょ♪」
車だと歩いた道もあっという間だった。
そりゃ5㎞だしね。
俺は本日2度目となる秡川温泉に入り、ゆっくりと身体を温めた。
車内でそらうみさんとも話したけど、秡川温泉は本当に芯まで温まるし、ずっと身体がぽかぽかして湯冷めしない。
すっかり体調を回復してテントに送ってもらい、俺は暖かいまま寝袋に入ることが出来た。
テントに戻るとお山さんが妙なことを言い出した。
お山さん「さっき男の人がテントに尋ねてきた」と言うのだ。
今日は物凄い雨と、テントが飛びそうな強風と、今にも落ちそうな雷の日。
明かり1つ無い真っ暗な公園のテントに、こんな日に誰だろう?と話を聞くと、福田百貨店のイケメン店主さんがこの天気を心配して「うちに泊まりませんか?」とわざわざ言いに来てくれたのだ。
こんなに有難いことはない!
しかし、俺は犬もお山さんの存在も伝えていなかったし、俺も居なかったので「大丈夫です」と御礼を伝えたとのことだった。
断酒して気づかされた多くの1つに、
この世で1番有難く価値(と言う表現しか思いつかない)あるものは、人の心遣いと気づかされた。
大切なものほど形が無く、気づきにくい。
俺とお山さんはイケメンご主人やおらうみさん、
ここに来るまでにお世話になったいっぷく堂のおっちゃん、山岳自転車乗りの兄ちゃんに恩返しを約束して、
この日は大嵐の豪雨と雷と強風の中、自慢の山岳テントで一夜を乗り切ったんだ。
「篠山道も山場を越えられたかな?」
その考えは甘く、まだ篠山道の修行は終わっていないことを痛感することとなります。
あれから3か月が経ち、ブログの移動作業で記事をリライトしております。
今でもお世話になった方々の顔を忘れていません。
あの日、あの大嵐の中、遠くまで帰っていったそらうみさん、運転が本当に怖かったと思います。
本当にありがとうございました。
篠山道の強い味方↓