遍路

英雄たちと眠る 区切り遍路40日目④

ほら、霊場巡りがホラーを恐れてる 区切り遍路40日目③からの続きです。

 

海沿いをひたすら歩き、今治市(旧大西町)まで辿り着きました。

今日は予想外にいいペースで進んで、宿泊予定地には早い時間に辿り着けそう…

ともならないのが、野宿遍路の悲しい所です。

実は風呂問題より頭を悩ませるコインランドリー問題。

昔懐かしい元コンビニのコインランドリーに辿り着き、ここに来て約1時間足止めです。

 

コインランドリーは、場所、時間共に恵まれないと、旅の行程にかなりの影響が出ます。

しかも運よく、洗濯乾燥一体型ならいいけど、別だとひと手間ですね。

料金も高いし、洗濯乾燥が終わるまで何処で待つか…、犬連れで…、勿論この寒い時間に駐車場待機となります。

これがまた目立ち、恥ずかしいし、きっと邪魔。

じっとしてられないタイプの俺は近くのコンビニまで今晩の食料や、待っている間のおやつを買いに歩きます。

風呂と同じように、汗で汚れた衣類をいつまでも背負い歩くこと、場合によっては再び着ることが苦痛で、最近は風呂問題よりコインランドリーの方が面倒に感じますね。

そんな洗濯乾燥も終わると気分までスッキリ!

これで数日間の清潔な衣類が保証されました!

コインランドリーから暫く歩くと、今治市街地へだいぶ近づいて来ました。

あとはこの交通量が多く歩道の狭い道を、大きな荷物と大きな犬を連れて必死に歩きます。

本当に気疲れします。

54番札所まで近そうで遠い、歩きにくい道を歩くと、

17時前に54番札所延命寺にやっと到着です。

個人的に好きな雰囲気のお寺です。

境内には真念さんの遍路石もありました。

ここまでの道中、わりと遍路石を多く見かけましたね。

 

延命寺を参り終えたら、約2km先の野宿予定地へ向かいます。

延命寺からは墓地を歩き、今治市中心部へと向かいます。

墓地で顔をあげると、いつも気になる世間を騒がせた〇〇学園が目の前にあります。

名前しか知らないけど、きっとその学園なのでしょう。

国家の闇とでも言うのか、正義はいつも正義とはならないのでしょうね。

途中で珍しい道標がありました。

この付近では数ヶ所見かけた手指しの小さい遍路石。

これは最近作られたのかな?

さて、日も随分と傾きました。

お山さんの選んだ今日の宿泊予定地である墓地はもう目の前。

あの階段を登れば墓地です。

元々、ちょっとリッチなホテルしか泊まらなかったお山さんが遍路にハマってしまい、今となってはホテルより寝袋愛好家ですよ…。

歩くのは遅いのに、いつも笑顔で歩いているお山さん

俺は1日に何度もこうやって振り返り、お山さんが追いつくのを待ちます。

今日で区切り遍路40日目。

1人なら結願している頃でしょう。

階段を登り終え、延命寺を振り返り、綺麗な夕日を見ます。

ここまで来たら後は眠れそうな場所を探すだけ。

これ以上進むと今治市街へ入るため、この付近で寝床を探さなくてはいけません。

カイ君も今日1日頑張ったし、お山さんも女性ながらペットの餌やマットまで積んだ約15kgを背負い、ここまで頑張って歩きました。

自分で歩きたいと選んだので何も偉くありません。

寝床を探しながら墓地の丘を越え、今治タワーを見ながら市街地へ坂を下ります。

そして、あらかじめ目星をつけていた隅っこにひっそりとテントを張り、夕食の支度をします。

不幸な侵略戦争が始まって数日の、心ここにあらずな今回の遍路。

どういう訳か、今日は陸軍墓地の隅っこでテントを張らせて頂き、今だから感じる、この国を守った英雄たちに深々と頭を下げます。

夕食も食べ終わり俺は1人、1kmほど離れた温泉へ。

すぐそこにコインランドリーを見つけ少し落ち込んだけど、思い出の詰まった今治の街をコーラ片手に飲み歩きました。

 

こうしてテントを張り終えてひとり徘徊することが多いのですが、いつも切ないです。

道路の向こうに見えたイオンは、四国に来だして右も左もわからない頃に母と息子と立ち寄った思い出があります。

精神を病み、どうにもならない中、どうしていいのかも分からず走り回った四国各地の思い出が、何処に行っても思い出され、母を思い出し、息子を思い出し、前妻を思い出し、

そして新たに思い出を作り続けているビーニャさんを思い出します。

 

先日、四国を思いながら仕事をしていると、ふと気付いたことがありました。

遍路と音楽は似たようなものであると…。

あの頃の懐メロを聞くと、あの頃の記憶がまざまざと蘇ってくるかのように、

何故か遍路は、あの風景を見ると、いつまでも鮮明にあの時の思いが蘇ってきます。

 

きっと、遍路の記憶は脳内に冷凍保存されており、風景と共に解凍されるのでしょう。

本当に遍路の経験は、味わった者にしかわからない、不思議な世界です。

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